aoは2025年に20周年を迎え、ゆかりのあるクリエイターの方々との様々なコラボを企画してきました。
その中でもブランドのスタートから長らく関わっていただいているスタイリストのタンナイミサさん。2025 Autumn Winterでは、Collaboration With Misa Tannaiと題して、aoとのコラボアイテムを発表しました。
コラボレーションを機に、改めてタンナイミサさんの暮らしや哲学をお伺いするべく、aoの西川と吉倉がブランド思い出の地、代官山でお話を聞きました。

旧代官山店から見えた景色
雑誌に関わる仕事がしたい。そうしてたどり着いたスタイリストという生き方
(吉倉)本日はよろしくお願いします。まずはじめにスタイリストを始められたきっかけを教えてください。
(タンナイさん) やっぱり最初は雑誌が好きだったのが大きいです、誌面を作る仕事がしたいなって思って。そのなかでもなんだろって考えたときに、洋服が好きだなと。服を作る方にはあまり興味なくて、あるものを組み合わせて着せてる人、と思って選びました。
(吉倉)はじめは編集の仕事をイメージされていたんでしょうか?
(タンナイさん) そう、編集も良いかもと。でも、当時編集部に入るのって本当に難しかったんです。それで、編集ではなくスタイリストの道を選びました。大学を出て少ししてからアシスタントを経て独立して、雑誌の仕事が中心でしたね。 そこから仕事が広がって、女優さんやタレントさん、ミュージシャン、広告などのお仕事にも関わるようになっていきました。
当時は雑誌がたくさんあった時代だったけれど今はかなり減ってしまって。一緒に仕事してきた人たちも雑誌から離れてしまったりして。業界の状況も大分変わってきていると思います。
(吉倉)時代の流れとともにファッションに関わる仕事にも変化があるのを感じますよね。

タンナイさんイメージイラスト
─仕事において大切にしている習慣や、インスピレーションを受ける場所について
(吉倉)当時は雑誌の仕事で海外へのロケなどもあり、現地でインスピレーションを受けることも多かったとおっしゃっていましたが、今でもスタイリングを考えるときは外に出てリサーチされますか?
(タンナイさん) 割と色々な場所へでかけてます。思ってもみなかったところでヒントをもらえることが多くて。洋服屋さんはもちろん、ただ街をふらりと歩いたり、公園に行ったり。全然関係ない場所にいても、ふと頭にアイデアが浮かんだり。
習い事で偶然一緒になった人など、ちょっとした出会いから刺激を受けることもあります。ずっと家でパソコンや本だけを見ているよりも、外に出ると何かしらのヒントがある。
ウロウロするのが好きだからこそ、そういう発見があるのかもしれません。
(西川)デスクワークばかりの自分、インプットが必要だって今とても背中を押されました。外に出たい!
タンナイさんが携わり、旅の中でスタイリングをしながらつくられた写真集
aoをブランドスタートから支えたスタイリング
(吉倉) aoとお仕事を始めたのは、いつからでしたか?
(タンナイさん) お店がオープンしてすぐの頃から関わっています。
(吉倉) きっかけは何でしたか?
(タンナイさん)aoの前任ディレクター さんが雑誌社にいた方だったので、その頃からお仕事をご一緒していて、そのご縁です。「お店を始めることになりました」と聞いて、「じゃあちょっとやってみようか」という形で、ビジュアルづくりなどをお手伝いするようになりました。 当時はaoのロゴなどを作ったデザイナーさんたちと小さな冊子の撮影をしたり、身近なクリエイターさんたちにモデルをしていただいたりして作ってました。
(吉倉)あの当時は、まだ“ガーゼの服”ってあまり見かけなかったですよね。
(タンナイさん) そうですね。
(吉倉)「ao」をはじめて見たとき、どんな印象を持ちました?
(タンナイさん)「あ、こういうのってありそうでなかったな」と思いました。当時、パジャマとか部屋着を扱うお店はあっても、“外に着ていける服ガーゼ服”はほとんどなくて新鮮でしたね。それに、ディレクターさんが元編集者だったことでお仕事の人脈が本当に広くて… 取材先や編集時代の繋がりを活かして、お店を立ち上げられたのだと思います。
(吉倉) 周りの方との関係が自然に広がっていたんですね。
(タンナイさん) そうですね。ご自身もとても気さくで明るい方だったからその作用もあると思います。
― ao代官山店での思い出
(吉倉)代官山店では長年スタイリングを担当されていましたが、お店に立たれることはあったんでしょうか?
(タンナイさん)立つってことはないんだけれど、ディスプレイ替えで毎月店頭へ出向いていたので、作業中にたまたまお客さんが入ってこられて、「すみません、これって…」って話しかけられることはありましたよ。ちょうど店頭のスタッフさんが2階に上がっているタイミングだと(代官山店は2階建てで、1階が店舗、2階が事務所だった)、私が分かる範囲でお答えすることもありましたね。
(西川)知らなかった!代わりに接客していただいてたなんて。
(タンナイさん)いやいや、大したことはしてないんだけどね。 分からないことは「ちょっと待ってくださいね」と、スタッフさんを呼びに行ってました(笑)。
(西川)タンナイさんの貴重な接客を受けたお客さまがいらっしゃるということだ…!
代官山店でのスタイリングをおさめたスクラップブック
ゼロからつくるよりも、昔からあるものを自分らしい形に
(吉倉)今回のコラボで、ものづくりの想いやお客様に届けたい価値は何ですか?
(タンナイさん)なにもないところから、物を“つくる”って本当に難しいことだと思っています。私は、服に限らず古いものが好きで、ゼロからつくるよりも、壊れたり、サイズが合わなくなったものを「また自分が着たい形に直す」ものづくりに魅力を感じます。
そういう“昔からあるもの”をベースに考える方が好きで。今回もaoの生地を使って、どうやったら自分らしい形にできるかなって、試行錯誤しながら取り組みました。お金や手間をかけて“つくる”なら「本当に良いと思えるもの」をつくりたくて。
(吉倉)ファストファッションとは違う方向ですね。
(タンナイさん)そうですね。ファストファッションには正直あまり興味がないかも。 気軽に楽しめる価値もありますが…。でも、私は持っている服をもう一度好きになれるよう手を加える方が好きです。
例えば、染め直したり、直したり…。そういう部分に魅力を感じます。まだ着られるなら少し手を加えて“もう一度自分のものにする”って、すごく良いと私は思います。
(吉倉)今回のコラボにもその考え方が反映されているんですね。
(タンナイさん)私物のヴィンテージのものを参考にしました。作ることは詳しいわけではないので、「この感じで作りたいです」とお願いして。
(西川)お借りした服をパタンナーさんに見せたら「これものすごく複雑なんだけど…きっと手の込んだオーダーメイドだと思う」って驚かれたりして(笑)。
「タンナイさんこれ、現代の技術で量産は難しそうです…」なんて言って。再現しにくい部分も様々あったので、イメージを損なわないようにしながら「譲れないポイント」「ここは簡略化しよう」というのをたくさんやり取りしながら調整しましたね。
ガーゼロングシャツワンピース
(タンナイさん)シャツワンピースは特にそうでしたね。 自分ではそんなに複雑なデザインだと思ってなかったんですけど、 襟の縁取りがとても手間のかかる作りだったようで。
(西川)実はシャツワンピース、最初に提案くださってたデザインが一度ボツになってて。量産が本当に難しい、かなり複雑な仕様だったんです。
(タンナイさん)そうそう。「かわいいけど、これ工賃がとんでもないです」と言われて(笑)。それで「これならどうですか?」って別の案を出したりして。
(西川)2案めもとてもかわいいもので、結果的に素敵なものができましたが… 昔の服は、丁寧に、手の込んだかたちで作られているってことを強く実感した良い経験でした。
(吉倉)今回のコラボで特にこだわったアイテムはどれでしょうか?
(タンナイさん)コートもよく製作いただいたなと思ってます。これは実物が手元になくて、昔の撮影で使った古着なんだけど写真しかないので、何度も確認しながら作ってもらいました。ボタンの位置まで写真を拡大して確認したりして、少しずつ形にしていきました。
(西川)タンナイさんのイメージが明確だったので、製作はスムーズでした。パタンナーさんも忠実に起こしてくれて。サンプルが上がってきたときも、「ボタンはもう少し大きい方がいい」など的確に意見をいただいて。リモートでのやり取りが多い中、最後まで丁寧に関わってくださって本当にありがたかったです。
(タンナイさん)こちらこそ。途中で「言いすぎていないかな…」って心配していて(笑)。でもしっかりやり取りできてよかったです。
(西川)私の段取りが悪くて怒られるかな、とはずっと思っていました。
(タンナイさん)全然大丈夫(笑)。気兼ねなく言いたいことを送っていました。
(西川)これもまた一波乱あったのですよね。当初使用しようと考えていた生地が完成に近い頃使えなくなってしまったんです。なんと機屋さんの火事で、この生地が織れる貴重な織機が燃えてしまって、もう作れないと。
(タンナイさん)いろんなことがある、これは仕方ない!と言って、違う生地に置き換えたのでした。
(西川)でもこれもまた、おかげさまで通年着やすい雰囲気のコートに仕上がりました!
ガーゼロングコート
その時が来たときに、どこにでも行けるように軽やかに
(吉倉)これから新たにチャレンジしてみたいことや、伝えたいことはありますか?
(タンナイさん)そうですね…どこでも行ってみたいし、住んでみたいなと思うタイプで。でも、あまり自分から探すよりは、自然にタイミングが来たら乗っていく感じです。
友達に「誕生日の本」っていうのを読んでもらったことがあって。そこに“何でも試してみたがり屋”って書いてあって、確かに当たってるなあって。だからチャンスがあれば何でも試したいし、割と軽やか。何か「ビビッ」と来たことがあったら、ってスタンスです。
(吉倉)行ってみたい場所はありますか?
(タンナイさん)行きたいところはたくさんあります。できれば短期じゃなくて、1 週間以上は滞在したいかな。観光を詰め込むより、現地の人のリズムで生活するのが好き。 朝起きて、「今日はこれしよう」って気ままに動く。そんな過ごし方ができたらいいなと思っていて。 1 人だと好きなように動けるけど、誰かと一緒の旅も嫌いじゃなくて。その人が行きたいところに行ってみたら、自分では思いつかなかったけど「行ってよかったな」って思うことも多いから。
(吉倉)旅のスタイルが自然で素敵です。旅を通じて得ることも多そうですね。
(西川)「旅をせよ」って言われた気持ちになります。タンナイさんの旅行記はもっとじっくりお聞きしてまたの機会に掲載したい。
(タンナイさん)ふふふ(笑)。家でじっとしているよりは、外に出るだけでも気分や視点が変わるので、旅に限らず自分の街を歩いてみるだけでも。そういうのがすごく大事だなと思います。
- さいごに
(吉倉)最後に、ao20 周年とお客様へ向けて、ひとことコメントをお願いします。
(タンナイさん)ありがとうございます。あれ、そういえば 20 周年のお祝いにコメントしたような…
(西川)はい、カタログに素敵なコメントをいただいています。その節は本当にありがとうございました。
(吉倉)では、そのコメントの内容は。カタログをお読みいただいてのお楽しみということで。
(タンナイさん)はい、そうしましょう。
(吉倉・西川)本日はお忙しいところ、たくさんのお話をお聞かせていただきありがとうございました。当日、よろしくお願いいたします。
(タンナイさん)こちらこそ。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

タンナイミサさんとのコラボアイテム
ヴィンテージコートをベースに、ガーゼで仕立てた一枚です。ポケットの大きさや大ぶりのボタンなど、雑誌の写真から着想を得て、イメージしたディテールを丁寧に形にしました。
遠い時代のネグリジェに宿るやさしさを、今の暮らしへそっと運びこむような佇まいです。ポケットの角度ひとつ、リボンの色合わせひとつにも、かつて手の仕事が生み出した細やかな美しさを感じていただけるはずです。使ったのは、着る人の体温になじむスラブダブルガーゼ。軽やかで気取らず、それでいて一枚で十分に絵になる。季節が移ろっても、つい手が伸びる頼もしさがあります。
アンティークのシャツをベースに、細部のディテールまで忠実に再現したタンナイさんとのロングセラーコラボシャツです。どんな時代にも寄り添う普遍的なデザインは、着る人の個性を静かに引き立ててくれます。
定番のニットカーデをベースに、スタイルを選ばずワードローブになじんでくれる、深みのあるカーキをコラボの新色として発売。気取らず、けれどどこか上品な一枚です。
オーガニックピマコットンを使った、aoオリジナルの糸。ちくちくせず、軽くて、やわらかい。その質感はまるで、空気をまとうような着心地です。鼠志野というニュアンスグレーのコラボカラーが登場です。
